●獄長フリーク顛末記:その3
真価を世に問う! WEBサイトでは、当然ながら補完絵を中心にやっていこうと決めていた。しかしサイト開設に際し、コンテンツは3〜4点の絵があるに過ぎなかった。とてもそれだけで補完というには不十分だ。枚数も足りないが、なぜ絵を補完しなければならないか説明する必要があった。北斗の拳はかなり有名な作品だが、連載からすでに20数年がたち、原作/アニメともに触れてストーリーの詳細を知っている人もいれば、そうでない人もいるだろう。ウイグル獄長のイメージをくつがえすのであれば、まず古いファンに獄長戦の醍醐味と隠された役割を説明し、当時の作画がいかに足を引っ張っているか画像で比較してもらう必要があった。また新たに北斗の拳に触れる人には、バイアスのかかったギャグイメージで固定される前にウイグル獄長の魅力を知ってもらいたかった。そこで補完絵には、物語・補完目的・解説の3つをセットにして付けることにした。 当初、リンクページは作らなかった。徒党を組まず「我が道を行く」でいこうと思ってた。今までの北斗の拳のファンサイトにはない異質なものとなるであろうし、独自のことを発言しようとするなら、賛同を最初から期待してはいけないと思った。しかししばらくサイトの運営をすると、これは反発を怖れてこっそり小声で発言しているようで、逆にいたたまれなくなった。待つだけで輪に加わらなくては何も始まらない。そこで積極的に同士を探すということでリンクページを追加した。
同士よ、集まれ! 一人で補完するのは覚悟の上だったが、実際にウイグル獄長再評価の機運を高まらなくてはサイト開設の意義も半減してしまう。ネットや身の回りで調べたところ、中にはウイグル獄長のファンとは言わないまでも、登場シーンのビジュアルの強さ、蒙古覇極道、トドメを刺されてなお復活する執念など、印象的な敵として記憶に残っている人はかなりいることは分かった。あとは崩れた作画の印象を払拭し、ウイグル獄長の今まで語られことのなかった側面を示すことができれば、再評価もかなりイイ線に行くのではないかという手ごたえがあった。再評価の機運が目に見える形となれば、それが呼び水となってより確実なファンとなるかもしれない。また、様々な人から支持されているのを見れば、たまたまサイトを訪れた人にも認識を変える・・・・まで行かなくとも「どうして?」と興味を持ってもらえたら御の字だ。そこで他の獄長ファンと一緒につくるファンアートのページを開設することにした。 すぐにサイトの常連さんからファンアートを2ついただくことができた、さい先よいスタート。だがそれ以降プッツリととだえてしまった。弱小新参サイトが募集しても、そんな都合良く集まるものではない。マイナーキャラでしかも悪役、それに絵を描くこと自体とてもパワーがいるものだ。そこですでに獄長を描いている人を検索して探したり、友人の絵描きさん達に頼み込んで描いてもらった。いずれの人もこころよく承諾していただいた。なんと心づよいことか、本当にありがたかった。
禁断の一手(その1) そんなこんなで、ようやくスタートできたファンアートのページ。並んだ画像を見ていてあることに気がついた。自分がいくら頑張ってたくさん描いても絶対に到達できないもの、それは「この人が描いてくれた」という事実自体だ。これは自分が考えていたより大きなインパクトになるのでは?そして何より、このサイト開設目的の目に見える成果ではないか、と思った。 サイト開設目的と、崩れたTV版の作画の払拭ために・・・・・それならば、まずこの方だろう。当時この方が描いてくれたら、獄長の評価も変わっていたのではないか?北斗の拳の作画と言えば○山氏、大それた思いつきだったが、藁をも掴む思いで私はその方へ連絡を取ってみた。この方、もちろんプロ第一線で活躍されているアニメーター。そんな方が一介のファン、しかもザコキャラクターを何の見返りもなく描いてくれるのだろうか? それどころか、私はかなり失礼なことをしているのではないかと心配した。なんせ、昔の作画崩れを今頃持ち出して、非難囂々と吊し上げ、あげくは自分の絵を見せびらかすという「アニメーターの敵」の様なサイトのためにである。 ところが、「忙しいので、だいぶ先になりますが・・・・・」と条件付きながら、意外にもこころよく引き受けていただいたのだ!しかも、お褒めの言葉までいただいてしまった!これでいいのだろうか? でも○山氏のファンアートをいただいたら、ある意味で「本当の補完」になるのかもしれない、というより「本物」だ。ひょっとしてイキナリこのサイトの目標達成?かなりのインパクトになりそうだ。 (ということで気長にお待ちしていますのでどうぞよろしくお願いします〜)
禁断の一手(その2) これに味をしめた私は、調子に乗って次のお願い先を考えていた。しかし何の面識のない1ファンの願いを聞き入れてもらうなど、本当に運が良かっただけなのだろうとも思う。大体、そんな業界のツテなど持っていなかった。結局しばらく次の一手が出せずにいた。そんな折り、ある席において幸運にもマンガ家の荒○弘先生にお目にかかれる機会が舞い込んだ。先生のハガ○ンは私も大ファン。しかも以前、単行本第8巻のカバーをとった裏表紙にこんなものを見つけていた→ これはまごう事なきかのお方!望みあるかも!そんなわけで、色紙と第8巻を持参して当日に臨んだ。 この恥知らずでもご本人がいらっしゃるとのことでかなり緊張したが、獄長補完のために先生にアタック!「これ描いてもらえますか?」おもむろに8巻を取り出し獄長似の人を指さした。「いいですよ」 え?マジっすか!あっさり快諾を頂いた。これでいいのか幸せ者め! 白紙を前に宙で当たりを付ける先生に「どうぞこれを」と差し出したのは、携帯電話の待ち受け画面に表示した獄長の勇姿→。その時、確かに先生がこう言うのを私は聞いた。 「かっちょえー!」 かくしてめでたく荒○弘先生の獄長を入手することができた→ (しかも命名していただきました:アルフォンス獄長)
禁断の一手(その3) 再び味をしめた私は、また調子に乗って次のお願い先を考えていた。こうなったらもう、このお方しかいないでしょう。あろうことか私は原作者(画)の原○夫先生あてにファンレターを書いていた。 文面には、最初「北斗の拳」が嫌いだったこと、再読したときに感じた悪役の定め、その中でもウイグル獄長には並々ならぬ衝撃を受けてしまった経緯をありったけの情熱で書きつづった。ふつう、ファンレターは2枚程度にするのが礼儀というが、気がついたら便せん7枚にびっしりと書いていた。(これでも減らしたのだが) 売れっ子漫画家とは、ただでさえ超多忙なスケジュールをこなし連載作品を描いているから、編集部にくる大量のファンレターは常時、段ボール箱2.3個たまっていて、読まれるまで1〜2年かかることもざらという。 そんな中、今や大家と呼ばれる原先生が7枚ものファンレターを実際読んでくれるだろうか?忙しいのにイヤがるだろうな。しかも、ていよく「ウイグル獄長を描いてください」と、色紙と返信用封筒(切手つき)まで同封してしまったのだから。 さすがに私も、印刷した葉書が来ればもうけもの、運が良ければサインだけでももらえるかな?と期待しないで待つことにした。かつて友人が少年時代に超売れっ子漫画家松○零○にファンレターを出したところ、1年たって印刷されたイラストの葉書をもらったことがある。彼はそんな葉書でも大喜びで友達に自慢していたことを思い出す。こんな大人になってまで自分がマンガのファンレターを出すとは思わなかった、しかも獄長描いてください・・・・・なんて。 と言いつつも実は1ヶ月が過ぎるまで、私は子供のように期待して待っていた。やがて2ヶ月が過ぎるとさすがに冷静になり、もうすっかり忘れてしまった。3ヶ月めになろうかというころ、私は長期出張でインターネットはおろか携帯もまともにつながらない地方に来ていた。すると偶然、電波の届く場所で家族から電話がかかった。「原○夫という人から、書留が来ているよ」 え?本当!でも同封したのは普通郵便の封筒と切手だったはずだが・・・・・。 うれしいはずが、私はちょっと不安になった。書留とはまさか公式文章で抗議が来たのか?まさかサイトを閉鎖しろなんて言われたら・・・・・・。長期出張はあと1ヶ月つづく。実物を見ないで憶測ばかりしていてもしようがないので、こちらへ転送してもらった。数日後、宿泊先に転送してもらった封筒が届いた。まぎれもなく私が送った返信封筒だったが書留の印が押してあった。表に追加分の切手が貼ってあったが、配達記録ではないし公式文章が入っている訳ではなさそうだ。さわると色紙が入っている感触があった。たぶん白紙の色紙を送り返してきたのだろう、私は思い切って封を開けた。 すると、私は一瞬で固まってしまった。「獄長、描いてあるよ→。」ことのきの喜びと言ったら、想像に難くないでだろう。信じられないというか、よくもここまで現実になろうとは。原先生はきっとイイ人なのだ。そして熱い気持ちは必ず通じるものなのだ!私は、いてもたってもいられず、デジカメで撮った画像をノートパソコンに放り込み、休み時間に車をかっとばしフリースポット常設の道の駅まで行ってサイトにアップしたのだった。 しかしながら今にして思うのだが、書留で(しかも不足分の切手を負担してもらって)送られていることをもっとよく考えなければならなかった。自分にそれだけ貴重な物を無理矢理人にお願いしたのだという自覚があっただろうか?単に不足分を負担してもらったことだけでなく、これは反省しなければいけない。
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