●旧劇場版 「おい、小僧! ま、まだ・・・・」 ◆物語 泰山流千条鞭の衝撃を飛び越え、ウイグルの背後に難なく降り立ったレイ。「拳王、次はお前の番だ!」ウイグルを相手にもせず、レイはまっすぐに拳王の前に進み出る。早々に闘いを打ち切られたウイグルは、怒り心頭に振り向いた。「おい!小僧・・・・」言いかけたその途端、ウイグルの巨体が輪切りになって崩れはじめた。
◆補完理由 このシーンの元絵→ レイが降り立ってからずっと引きの絵でシーンが続くため、どうしても絵の密度が足りない。巨体のウイグルが倒れるシーンで迫力があると、レイの強さにもなる見せ所にもなると思うのだが・・・・。それにウイグルの倒れ方があっさりしすぎで、拳王軍の指揮官にしては肩すかしだ。間にもう1カット入れてほしかった。
◆もう一呼吸 少なくとも映画の構成上は、拳王軍のナンバー2として軍を指揮していたウイグル。レイとの闘いであっさりと倒されては、拳王軍はそれほどのものではないと言う印象がどうしてもぬぐえない。「実は、強いのは拳王だけ」と評判が流布しては、覇道をゆかんとする拳王にとってこの拳王軍では「時代の役に立たない」。 ただ、貴重な映画の時間を中ボス倒すのにさけられない、というのも分かる。ウイグルがレイを相手に太刀打ちできないことを嘆いているのでは決してない。最後は瞬殺されてもいい。ただ、レイとの闘いに23カットをさいた割に、一連シーンの最後の描写があまりにあっさりしすぎなだけだ。そのことによって全体から失われるものも有るだろう。具体的に言うと、 1.画角が引きすぎで、しかも俯瞰気味のため客観的すぎる。 白熱の戦闘シーンから一気にクールダウンしてしまう。ウイグルとの闘いが終わり、いよいよ拳王との対峙が始まる間の区切りなのだがクールダウンしすぎで、真の倒すべき敵を前にしてレイの気迫がそこでとぎれてしまっている。 2.大きなものが両断されたスケール感がない。 もともと南斗水鳥拳の(描写の)持ち味であっさりしているのだが、何を切っても紙を切っているように見える。ウイグルの巨体が輪切りになって崩れる際に多少時間の引き延ばしがされているが、大きな物体を切断する技のキレというより手品を遠くから見ているような嘘っぽさに見えて興ざめだ。ここはレイの表情をミドルショット〜バストショットで押さえつつ、それをなめて背景にウイグルの巨体が崩れていく様子を見せれば、スケール感とレイの気迫も継続し、拳王との対峙する緊張感につなげることができたのではないか。 3.セリフがあまりに尻切れ、危機感がない。 ウイグルが振り向き、レイを呼び止めようとするセリフ「おい!こ・・・・・・」で、すぐ輪切りにされてしまうため、盛り上げた割に闘いが尻切れな印象であっさり終わる。その後すぐ、必至に闘いをやめさせようとするリンの神がかった絶叫がつづくにもかかららず、これでは拳王に立ち向かうレイの置かれた状況に危機感が漂わない。結局、作り手も含め観客も結末を知っているから、レイの危機やリンの行動がわかる訳で、物語の流れだけから言うと緊張感が続かない。もし、ウイグルの最期のセリフをもう少し引っ張ってくれたら、大分印象が変わると思う。 例えば、拳王を見据えた鬼気迫るレイの表情を望遠のミドルショットでとらえ、その背後に遠近感を圧縮したウイグルの巨体をあえて一部しか見えないアングルで固定。ウイグルが振り返り「おい!小僧!ま、まだ・・・・・」と追いかけようとしたセリフの途中で「ぐ、ぐ、ぐばっ!」っとゆっくり胴体が割れて崩れ落ちていくまでを、1つのカットで追っていく。 レイの揺るがない表情の背後で巨大な敵が崩れていく一連のダイナミックな動きがあることで、レイの強さと緊張感を保ったまま、次の拳王につなげることができると思うのだが。
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