■■■■INTRODUCTION
ウイグル獄長とは

サイト開設の目的

拳王直属の部下であり難攻不落のカサンドラ伝説と恐れられた男、ウイグル獄長。ケンシロウを一度は撃破・失神させるまで追いつめた実力の持ち主だが、テレビシリーズでの著しい作画くずれと不適切な演出からギャグキャラとして定着してしまった。

初めて原作を読んだときに抱いた、挑戦者を待ち続け、その果てに壮絶な最期を運命づけられた肉弾派悪役のサガを描き切れていないことは、いまだに口惜しくてならない。放送からかなりの年数がたっているが、この男の猛々しくも愚かで哀れな生き様を独自の観点で補完していきたい。

「北斗の拳」について

物語についての解説は、北斗の拳をあつかったサイトがあまた在るので、ここでは割愛する。

このページを読んでいる人にこのタイトルを知らない人は、まずいないであろうが、アニメを子供のころ見ただけで、案外原作を読んだことがない人も多いのではないだろうか。原作は武論尊、作画は原 哲夫、週間少年ジャンプ1983年41号〜88年35号に連載された。当時の世紀末の行き詰まった世相に、核戦争後の混沌から拳法を武器にヒーローが生まれるストーリーが受け入れられた。というよりこれまで無かった必殺技が秘孔を突く斬新なアイデアと、屈強な悪党どもが時間差ではじけ飛ぶショックと痛快さ?がうけ、「お前は、もう死んでいる」というセリフが一世風靡した。アニメ放映開始時、暴力表現をどこまでするのか、から「ひでぶ」「たわば」をどう発音するのかまで問題にされた。人気が上がるに連れ多くのアニメーターも自ら描かせてほしいと名乗りをあげたほど。それにより話ごとに大きく作画が変わる憂き目も見た。

しかし、なんと言っても北斗の拳の魅力は、原哲夫の画力だ。力こそすべて、という混沌の世界を群雄割拠する屈強な男達の描写だ。そして武論尊の浪花節ストーリーにしつこいまでの説得力を与える。当時格闘技をはじめた人に北斗の拳に影響を与えられなかった人はいないはずだ。もし、アニメだけの作品であれば、ただの醜悪で下品なものに終わったでろう。まだ原作を読んだことがない方は、ぜひ読んでみてほしい。

ウイグル獄長とは

カサンドラ監獄の獄長。拳王直属の部下でトキの監視役を担っている。カサンドラは、かつて鬼と呼ばれた凶悪犯たちが哭いて出獄を乞う「鬼の哭く街」。誰も生きて出たことながい不落のカサンドラ伝説は、そのままウイグルの不敗伝説でもあった。ウイグル獄長は、自らの伝説を誇示するため殺した者の墓を累々と立てさせ記念碑とし、人々に恐怖を植え付け、カサンドラを支配していた。

その反面、満ち足りない闘志を満足させてくれる挑戦者を日々待ちわび、ケンシロウの到来を知るや、あらかじめ墓穴まで用意するなどウイグル獄長の闘う事への執着と自信は絶大。実際その強靱な巨体から繰り出す蒙古覇極道は、北斗の拳には珍しい非打撃系のフィジカルな衝突による攻撃で、ケンシロウを一時撃破、失神にまで追い込んだ。しかし、最後は自慢の鋼鉄の肉体も北斗神拳に破られ、自ら用意した墓穴に押し込まれてしまう。

だが北斗神拳に沈んだかに見えたウイグルは瀕死の状態で墓穴から這い上がり、トキとの遭遇を阻止しようとするが、あえなく絶命。ケンシロウにトドメを刺されて復活した漢は他にいない。トキの重要性を知り、拳王から託されたウイグルの使命感には並々ならぬものがある。

ウイグル獄長はカサンドラの番人とはいえ直接拳王の息のかかった初めての敵でもあり、展開上今までとは異なる強大な拳王軍の期待感を担っている。それゆえ北欧の軍神のような風貌と強靱な肉体が与えられ、その[大きさ]を文字通り巨体として担わせられたと言える。だからそれを強調するような体を張った肉弾戦をいどませているし、いつもクールだったケンシロウも物語上はじめて[本気]で闘うことになったのである。

ケンシロウが物語の展開を切り開いていくためには、その大きな[障害]を崩さねばこの先待ち受ける拳王軍との対決が開けていかない。拳王の強大な影に立ち向かい、恐怖で閉ざされた門をこじ開ける決意をここで見せる必要がある。 物語上、カサンドラがその最初の関門なのだ。「ここで倒れるようなら、この先あいつを待ち受けている恐怖には、しょせん勝つことはできん」と実際トキ自身のセリフにもそれが表れている。

ここで、物語の構造的見地から北斗の拳を語る「北斗の庭園」主催者"才兵衛"氏が カサンドラの設定を分析したの文章を紹介したい。

・・・・・・・この篇の主題は"危機"だ。ウイグルがもたらす危機ではなく、ウイグル以降に続く危機を暗示している。その危機である拳王軍の強大さを演出する為にウイグルは強くなければならず、トキ救出も困難でなければならなかった。

・・・・・・ケンシロウにしてみるとカサンドラを訪れたのはトキを救出する為に他ならず、カサンドラ解放までは望んでいない。 然し承で囚人ライガとフウガが登場、ケンシロウに期待を寄せ救世主として迎える。・・・・・・・・・抑圧者が強大であればあるほど虐げられる囚人のケンシロウに対する期待は当然高まり、それまでライガとフウガが勝手に担いでいるように見えたケンシロウがその気になったように見える。また此処で示されたウイグルの抑圧は後に御登場あそばされる拳王様が統治する世を予告する意味もある。

・・・・・・カサンドラは解放されたかに見えたが拳王親衛隊が登場し、まだ戦いを終えられぬことが判る。此処でのウイグル獄長の抑圧と絶好調はこの篇で影のみ御登場の拳王様の強大さを演出する為のもので、拳王様が強大であるからこそ一時的にでもウイグル獄長はケンシロウを圧倒せねばならなかった。・・・・・・・ライガとフウガが開いた門はラオウ様と争う戦場への宿命の門だったと読むことも出来る。とした場合、カサンドラじたいを拳王軍の門だったと見なせよう。

〜『北斗の拳』の物語構造についての論攷 三十一篇全比較 09.カサンドラ篇より

「北斗の庭園」

 

こうしてみると、それまで行き当たりばったりに思えていたカサンドラの展開が、骨太の構造を持ち物語上大きな転機であったことが構造的に浮かび上がってくる。ウイグル獄長の設定も、これから始まる拳王との対決を見すえて用意周到に準備されたいたことが分かる。

これは蛇足になるが、さらに想像力を働かせるとウイグルの番人にとどまらない側面が見えてくる。かつて修行中の拳王近くにいてトキとケンシロウの情報に通じていたこと、カサンドラ監獄ではならず者でも殺さずに収容しておく必要性があったこと、劇場版では拳王の片腕として鞭をふるい、拳王軍を指揮・鼓舞していたり、拳王から時代の役に立たない牙一族の一掃を命令されていることなどから考えると、ウイグルはカサンドラで拳王軍の養成を行い、兵士の供給と編成を担っていたとも考えると面白い。(詳しくはギャラリーのコラムを参照)

 

キャラデザインと名前

北斗の拳のビジュアルは、映画マッドマックスとファンタジーアートの大家フランク・フラゼッタの世界に彩られている。中でも拳王とウイグル獄長のデザインは、フラゼッタへのオマージュとでも言えるほど色濃い影響を受けている。そして初めて遭遇する拳王軍のボスキャラということもあり、演出上今までのパンク系と違う伝説の兵団をイメージさせる必要もあったのだろう。ウイグル獄長のヴァイキングのようなマッスルで露出度の高いデザインは、ここから来ている。 

名前についてウイグル自信が「我が祖は蒙古」と言っているが、ウイグルという名前はトルコ系の名前だ。かつてモンゴルが大陸を制圧以後、中央アジアの氏族と混血していった一族と言ったところか。 なお、正規英語版の北斗の拳でのウイグルの表記は"Wigul" こちらは欧米で実際に人名に使われている名前だ。(詳しくはギャラリーのコラムを参照) なお、香港経由のDVDや関連グッズの中には、UigulやUighurとウイグル族と混同している物がある。

 

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有名な作画のクズレ

元々中心となった作画監督は肉体派の描写に定評のあったベテラン須田正巳氏であったが、当時あまりに人気なアニメのため、仕事をやらせてほしいというアニメータが続出したのは有名な話。そして長期間でもあるので、かなりまちまちな作画がおこなわれた。 その中でも第40話のカナメプロは異彩を放っている。当時、はやりの作画か知らないが、メインキャラを美形化し念入りに描いてあとのキャラは故意に崩すという変な「ノリ」で仕事をしていては、同人誌のスタンスと変わらない。そんな内部の一時的なノリで公共の電波に流してしまえば、おしまいというのでは、あまりに作品に対しての責任意識の無さ、というよりプロとしてどうなのだろうか?

 

原作(原哲夫)のウイグル獄長
 

 

TVアニメ(カナメプロ)