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執念の死力

物語

ケンシロウによってウイグルが倒され、ついにカサンドラから鬼たちの哭く声が消えた。恐怖から解放された囚人・看守もろとも歓喜の声がわく。しかしそれもつかの間、拳王親衛隊がすでに差し向けられていた。カサンドラがまた絶望へと転落する。ただ希望はケンシロウとトキとの邂逅にかけられていた。そんな中、地から巨大な手が現れ看守の1人が握りつぶされた。北斗神拳でとどめを刺されたかに見えたウイグルが、すさまじい執念で墓穴からはい上がった。「あの二人を会わせてはならぬ!」と最後の力をふりしぼってケンシロウとトキとの邂逅を阻止しようとする。

 

補完理由

この補完絵の元絵。実際の映像では、ほとんど暗くつぶれて絵の詳細が分からないので暗部をレタッチしている。拳に握りしめられた部下からウイグルの顔にチルトアップしていくカットなので一枚の絵にすると崩れているのか、それ以上にぐちゃぐちゃになったウイグルの状態を表現しているのか区別がつかない。ウイグルの使命感を見せつける重要なシーンなので当然補完。

 

TV版最大の罪

これまでTV版の絵のクズレを多数紹介し補完してきたが、クズレ以上にウイグルの存在価値を失墜させているのがこのシーンのセリフだ。 北斗神拳で秘孔を突かれ、断末魔の末にはじけ飛ぶウイグルの巨体を目の当たりにして、誰もがウイグルの絶命を確信したであろう。 しかしウイグルは並はずれた体力で墓穴から這い上がり、執念の死力を見せつけるのである。 それをTV版の演出では台無しにしてしまっている。

原作では最後まで拳王から託された使命、すなわちケンシロウとトキの邂逅を阻止しようと瀕死の状態になっても立ち上がるのである。 巨体を墓穴に押し込まれ骨格はズタズタ、肉は引き裂かれ、とても息を吹き返す状態ではない。 それどころか一瞬にしろ完全に立ち上がってしまうのだから、それだけの強い執念の理由を感じさせるのである。 それこそウイグルの最大の存在理由である「トキの重要度の演出」に他ならない。 「あの二人を 会わせてはならぬ!」と最後まで役としての使命を全うして力尽き、体がまっぷたつに割れて果てるのだ。 なんとも壮絶にして見上げた悪役魂だ。 惜しむらくは、復活シーンでいきなり顔が崩れていること。 すさまじい執念を演出するためにあえて酷い状態を見せているのであろうが、ここまで崩れてはせっかく用意されたセリフが全くしゃべれないどころか発声すらできない。 原作で唯一残念な点だ。せめてセリフの後にするべきだろう。

一方TV版のウイグルが「カサンドラには、もうひとつ伝説がある。」と墓穴から起きあがって死に際に残した言葉は、「最後にカサンドラは荒野にもどる。」である。 私はそれを聞いて唖然としてしまった。 何が言いたいのか?そんなことを言うためにわざわざ這い上がってきたのか? そこまでして誰にどんな重要な情報を伝えたかったのかが検討つかないばかりか、演出的な必要性も感じない。 ヒーロー物ならボスを倒した敵の根城は崩壊するのが相場で、わざわざ説明したところで「ああそうですか」でおわりだ。 (演出というより脚本家がウイグルの最後の登場を忘れたので無理矢理入れ込んだ?) それにより、トキとの出会いの重要度を演出するウイグルの役割は、半分になってしまった印象だ。期待どおりに見せ場をつくり、ギャグキャラだと罵られてもなお、ボロボロの体で墓穴から這い上がってまで使命を全うしようとしたウイグルの気概は、いったいどこへ向けられればいいのか。 不適切な演出に体を張った悪役魂も台無しにされ、なんとも哀れだ。

 

 

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