■■■■PROFILE
こざかしい鞭より、やっぱりウイグル獄長はこれだ!

獄長フリーク顛末記:その2

補完計画、始動!

かくしてTV版の作画崩れによる失望から一転、一念発起して自ら獄長補完を決意するに至った訳であるが、まさか個人でアニメーションの1コマ1コマを修正するには膨大な労力と時間を必要とするし、むろんそんな画力は持ち合わせていない。おのずとストーリーに沿って見栄えのするシーンを選び、1コマを1枚の絵として仕上げることになった。最初は8枚ぐらいの予定でシーンを選ぼうとしたが、描き進めるうちに「このシーンは外せない。このシーンがあるならこっちのシーンも」と、増えてしまった。

しかも紙を使わずゼロからPCで絵を描くのは初めてで、タブレットになかなか馴染めずPhotoshopのブラシを選ぶ煩わしさに閉口しながらも、レイヤーによる変形や修正の便利さを知ると、なかなか使い勝手が出てきた。何より、やり直しがいくらでもきくのは、アナログにはないメリットだ。しかしそれ故に、ちょっと描いてはまた描き直すというクセがついて、いつまでたっても方法論が確立せず、延々と補完作業をするという非効率なスタイルをいまだにつづけしまっている。もともと紙でも要領よく描ける方ではなかったのが、結果としてますます遅筆となってしまった。

一枚描くにしても一進一退でなかなか形にならず、途中段階でとりあえずと保存するファイルは数十個にもなる。それにもかかわらず、いっこうに描き上がらない自分の画力にほとほと凹んだ。それが毎回だ。いじればいじるほど悪くなることもある。そんな時、数十のファイルを消しながら、これに費やしてしまった時間を思うと「オレは一体何をやっていたのだ」と、変な事にこだわってしまった自分の愚かしさを憂うこともある。

冷静に考えると、なぜここまでやるのか?と自分自身でさえ合理的な理由が見つからない。ただ、意図的に崩された獄長のキャプチャー画面を見ていると、どーーーしてもウイグルの真価を見せつけたいという衝動に駆られるのである。それに恥ずかしながら少しづつ補完が完了していく画像を見ていると、「獄長は、やっぱりこうでなくっちゃ」と一応の達成感は得られるのである。

 

大海に、バケツ一杯の異を唱える

実を言うと当初、補完絵をWEBで公開するつもりはなかった。TV版の作画崩れの口惜しさを「獄長はこんなものではない」と自分自身で納得するまでカッコいいウイグル獄長を描いて払拭すれば、それでよかった。だが、「これぞ獄長!」と思える絵が偶然描けると、誰かに見てほしくなるものだ。そのうちにもう少し欲が出てきて、これを使ってウイグル獄長の評価を上げることができれば・・・・と思うようになった。 

ところが、すぐにはWEBサイトで公開することはなかった。そもそも北斗の拳を世間一般には半分ギャグマンガだと思われているだろう。しかもその中でもウイグル獄長である。暴君三昧のすえケンシロウの怒りを一手に買い、こともあろうに北斗神拳を相手に体当たりで向かう体力馬鹿だ。しかも自分で用意した墓穴に巨体を押し込めらるという屈辱的な罰を受けた悪役だ。ギャグならまだしも復権を目指すとは、なぜそこまでしてウイグル獄長なのか?当時、北斗関連サイトをはじめ一般的にも北斗の拳をギャグで扱うサイトが隆盛で、とても共感は得られないと思われた。あえてしようものなら、異常なマニアとして敬遠されても仕方がないであろう。

自分一人の中の「不遇の猛将」として終わらせるか、それとも恥を忍んで公開するのか。しかしギャグキャラだと思っていた人が1人でも多く獄長を見直してもらえるならば・・・・・・と考える一方、そこまでして他人に認めてもらわなくてもいいではないか、マジメにやること自体がギャグに見られるのではないか、それなら無理せず誰にも邪魔されず自分の気が済むまで補完していればいいではないか、としばらく気持ちが定まらずにいた。今にして思うと、一人で異を唱えることに自分自身で規制をかけていたのかもしれない。 

しかし、自分はこの男の生き様にある種、衝撃を受けたのは紛れもない事実だ。いや、そんな言葉は生ぬるい。胸を締め付けられる様な痛みさえ覚えた。 ザコに甘んじ誰にも顧みられず、やられるためだけの存在であっても圧倒的存在感を放ち、みじんも揺るがず「悪役」のために血湧き肉躍る男の潔さ、北斗の拳に再び触れた時に感じたあの「体の震え」だ。たかがザコとはいえ、超弩級パンチを食らってそこまで自分を揺さぶられたなら、それにふさわしいだけのパンチで応えてやるのが男だろう?誰の目をはばかる必要があろうか。それが伝えられるのであれば、これにまさる獄長への手向けはないのではないか。次第に私の気持ちは収束していった。

こうしてWEBサイトで獄長の復権を世に訴えてやろうと心が決まった。

獄長フリーク顛末記:その3へ

 

←戻る